予算無制限、理想の自転車がほしい。
そんな人にはオーダー車

最近のトレンド

サイクルモードで人気のブースが「匠のコーナー」です。ケルビムやレベル、マキノなど国内の手作り自転車工房が軒を連ねています。
外国の高級ブランドは、所有する喜びを与えてくれます。その場合、アルミフレームよりは、振動吸収がよいとされるカーボンフレームがおすすめです。ただし、外国ブランドでも廉価普及価格帯モデル(15万円以下のほとんど)は、本国以外で作られたOEM製品だったりします。
あこがれだけで買うと「がっかり」することになるので、要注意です

いつかはフルオーダー

人間の出力は、0.3馬力ともいわれます。あの、出前に使われるHONDAスーパーカブだって10馬力はあります。
僅かな力を最大限発揮して、8時間走ると、東京から静岡まで行けます。
走りを(命も)ゆだねる自転車だから、納得いく道具を使いたくなりますね。

そう思い至ったら、フルオ-ダーしかありません。

ロングライドは走行時間が長く、場合によっては雨中や雨上がりを走ります。その際、マッドガード(泥よけ)がないと背中から頭まで盛大に泥水をかぶります。ハネが上がり、ウエアから髪の毛の中までドロドロになります。よって、お金さえ何とかなれば、ロードバイクにマッドガードを装着した「スポルティーフ車」が、実におすすめです。
この車種は、いまやどこのメーカーも作っていません。自転車専門店や小さなサイクル工房(職人が手作りで自転車を作る)へオーダーするしかありません。

さいわい、我が国には、良いものを作ろう、個性的なものを作ろう、と自転車づくりに命をかけている職人がいます。各人の脚力を最大限引き出すという、機能的な側面はもちろん、自分だけの自転車なのだという満足感をどれだけ感じてもらえるか、ということを大事にしている人たちです。一度、工房を覗いてみましょう。
こだわりとは? 走りやすい自転車とは? 職人の熱い言葉を聞いてみてはいかがでしょうか?

テスタッチ

おすすめは、ロードレーサーの「YAMATO MCM」フレームで組む自転車。
フレーム価格は、カーボンフォークのモデルで169,500円
【コメント:テスタッチ YAMATO MCM 置き換え不能】

ラバネロ

おすすめは、エキップ(クロモリ=スチールパイプ、部品は標準でシマノ105) 約25万円

ケルビム

おすすめは、UL-Ⅰ(クロモリ、部品はシマノアルテグラ仕様で) 328,403円
RFロード(クロモリにカーボンフォーク、部品はシマノアルテグラ) 約311,035円
【コメント:ケルビム UL-1 RFロード 置き換え不能】

細山製作所

本当の意味でオーダーメイド。店主と相談を重ねて自転車の仕様が決まります。こちら

オプションでグレードアップは、際限なしです。ブランドものの腕時計を買うくらいの決心があれば、日本を代表する職人の惚れ惚れする逸品が手にはいります。 

オーダーのメリット、特徴とは

デロ・デ・リタイヤ渋峠ステージの帰り、長野新幹線の車中で、会員の高宮氏から質問がありました、
「オーダー自転車って、そんなに良いモノなのでしょうか?」
「なぜ、事務局は、オーダー自転車にこだわるのですか?」
「キャファやプロジェクトMの自転車って独特ですが、そのメリットは何ですか?」
う~ん、何がよいか!? ココで改めて整理してみます。

まず、
マスプロ車は、誰もが乗れるように最大公約数で作られた自転車。
一方のオーダー車は、自分だけに合わせられた、世界で唯一の自転車。

そこが違います。

身長から、体重から、手足の長さから、体の柔軟性から、体力から、一人として同じ人はいません。だとすれば、道具に乗って、初めてパフォーマンスを発揮するサイクルスポーツでは、体と道具のマッチングが非常に重要です。
特に私のように、身長180cmを超える人や、逆に身長155cm以下の人に合致したサイズの市販自転車は皆無です。

「え、カタログには、乗車可能って書いてありますよ。」

確かにそうです。
でもあれは乗車可能な数値であって、最適の数値ではありません。
ステムを替えたり、サドルを上げたり、後ろに引いたりで、何とかやりくりしたら、まあ乗れることでしょう。という数値なのです。

実際、お店に行ってみると分かります。大手の店でも、売り場にあるのは、SとMとLの3サイズ程度です。
気の利いたブランドでも、480、500、520、540、560の5サイズ程度です。
これは、驚くべきことです。ランニングにたとえると、シューズのサイズが3種類しかないのと同じです。
靴はこれしかないから、多少ブカブカでも大丈夫です。つま先に詰め物すれば走れます。きついときは、我慢してください。
そう言われているようなモノです。ハンドル幅やクランクの長さなどは、元々のサイズで売られることがほとんどです。

それを、キャファへ行けば、丸1日かけて、オーナーの体格、走り、経験、用途、仕様をじっくりと会話します。
途中10時のコーヒーが出て、昼食にお好み焼きが出て、おやつにたこ焼きが出て、やっとオーダーが固まります。

プロジェクトMの松永さんでも同じです。まず採寸する日を予約します。突然ではだめです。体格を採寸し、用途を話し合い、その用途にあった工作や部品構成を話し合います。決めるべき事項は30項目、いや60~70項目くらいあるでしょう。塗色だって何十色ある色見本から選ぶことになります。塗り分けも自由自在です。最低、半日コースです。来店時に出されたエスプレッソは、当然冷め切っています。そういうモノなのです。マスプロ車とオーダー車では、かくもサイズや使い方に関する扱いが違うのです。

次に、
マスプロ車は、そこそこの経験の店員さんでも売れます。
一方のオーダー車は、作り手の名が残るから、蓄積されたノウハウを注ぎ込んで売り(作り)ます。
この、「そこそこ」と「注ぎ込む」ところが、違います。

具体的には、オーダーの際、店主はオーナーの発言を注意深く聴きます。それは、見栄があったり、気後れしたりで、お客が「ふかして」いる部分を選り分ける作業なのです。「ふかし」を注意深く割り引いて、頭の中で自転車の作りを瞬時に計算します。
「このお客には、こういう作りだ!」と。

「いや~、私なんかまだまだですよ。」
=「経験を聞くと、この人かなりだな。力が逃げないように。」
「どこの大会で何位でした。!ガンガン行けるのを!」
=「たいしたことないな。少し柔らかくして、ゴール前で脚を残せるように」

脚力と走り方にあった自転車の作りを、ササッと頭の中に描き出し、それをオーナーに示して、実際の走りに適合するよう提案します。ここのところが、いわゆる「ノウハウ」で、何が何でもお客のいうとおりには作らないのです。
これがすごいところで、お店の修正が入った上で、結果として、オーナーが「こういう自転車が欲しかったのです。」という満足に結びつけていきます。

第3に、
マスプロ車は、同一製品なら、素材や工作が同じです。それに、思い切った新形状は取りにくく、塗色を別とすれば、平凡な形が多いです。
一方のオーダー車は、一見同じ製品でも、オーナーに合わせて、走りを楽にする小細工を効かせます。さらには、大胆な工作や造形も可能となります。

実際オーダー車では、パイプの径や肉厚、溶接(接着)の方法、ワイヤー通しなどの小物の位置、あれこれを微妙に変えて、最適化を図ります。
ショックの吸収やオーナーのペダリングにマッチしたハンガーの反応、使う場面に応じたハンドル特性など、細部を微妙に違えることで、扱いやすさを生み出していきます。ここが、何となく安心できる乗車感覚を生み出していきます。

さらには、リアサスのついたロードバイク、シートパイプの省かれたロードバイクなど、新たな提案を持つ自転車を手にすることができます。

例えば、私が所有しているリアサス付きロードバイク。
コンセプトは、以下のような考え方。

体を揺さぶる路面からの振動は、それだけで筋肉を疲労させます。
だったら、人間が自転車から受ける振動を低減してしまおう。
そのためにはリアサスです。
→ しかし、BB軸とリア サスのスイングアーム軸が同一位置だとパワーをロスしてしまう。
→ それならその軸をずらせばいい。
スイングアーム(チェーンステイ)の途中にBB軸を置けば、踏み込んだときリヤサスの沈み込みがなく、パワー減退を防げます。

こういうことから、リアサスペンションが付けられました。
このバイクで2000年に東京~糸魚川を走ったところ、それまで15時間かかったものが、何と13時間を切る結果が出ました。もちろん、大王7原則を守っての話しです! 
踏んだ力が100パーセント駆動力になる、そういう脚とタイヤが「直結」したかような感覚が味わえました。不思議なバイクです。
そして、このバイクは日本に10~20台しかないそうです。そこら辺の有名ブランドの高級車よりも、遙かに希少価値があるといえます。

初め見本車を見たとき、
「うそだ、こんなゴツゴツした造形の自転車で、楽に速く、走れるわけがない。」
と感じました。しかし、店主が関西弁で「ええで~、ええで~。ここがこうなってああなるから、ほんま楽や。絶対オススメや。」と熱弁をふるいました。その熱意に負けて、清水の舞台から飛び降りました。

結果、大正解でした。

プロジェクトMでいえば、メールのやりとりが数十回です。数年越しの相談で、双方の考え方が一致し、メルクスオレンジ号ができあがりました。
カミさんよりも、店主にメールした回数の方が遙かに多いです(ごめんなさい)。
できた自転車は300m走っただけで、自分の求める乗り味を持っていることが分かりました。どんぴしゃりでした。
そして、練習不足で参加した川越~直江津。苦しかったけれど、メルクスオレンジ号が疲労を最小限にしてくれ、日本海の夕陽まで導いてくれました。「クルクル漕いでいれば、そのうち直江津まで行けるさ~」と自転車が自分を励ましてくれました。そういうモノなのです。

これが、キヨミヤザワやアルプス(トーエイ)の自転車であれば、なおのことオーナーは「物語」まで手にすることができます。
伝説的なビルダーによる、自分のための自転車。「所有する喜び」も十二分に満たしてくれるでしょう。